ときには、課題から逃げることもあっていい。

 

 カウンセリングをする上で、大切な考え方のひとつに「悩みは、その人の大切な課題」というものがあります。本人は苦しいわけですが、それを乗り越えて成長してゆくことが大切なので、周りの人が勝手に解決してあげてはいけない、という考え方です。
 
 親子関係にたとえて説明すると分かりやすいです。
 子供が何かほしいものがある。まあ、ある程度は親は買ってあげて良いと思うのですが、何でもかんでも買ってあげてしまうと、本人が自分で稼いでほしいものを買う喜びを味わう機会を奪ってしまうことになります。お金の大切さを学ぶ機会を、親が子供の悩みを簡単に解決してあげたことで奪ってしまったわけです。この子は、社会に出るときに結局現実に直面してショックを受けるか、社会に出たがらなくなるか、とにかく、先延ばしした課題は結局本人の元にまたやってくるわけです。
 カウンセリングでも同じで、相談者の課題は、カウンセラーが勝手に解決してはいけない。これが原則です。
 
 それを大前提として書くのですが、やはり、とても大変な経験をする人もいるわけです。非常に暴力的な親だったり、犯罪の被害だったり。その辛い経験をすべて学びに代えて乗り越えていったら、それは本当に立派なことだと思うのですが、必ずしも、そうするばかりが解決策ではないな、と、最近思います。
 
 確かに、心理療法の手法の中には、過去の記憶を、セラピストの誘導の中で辛くない形に変化させてしまう方法もあります。経験から学んだり、成長したりすることをせずに、とりあえず楽になれるわけです。その場合、人生の中で同じような課題が再度やって来た場合、結局同じ問題に直面することになります。
 
 だからもちろん、上の親子の例のようになっていないか、よく考えることは必要なのですが、でも、本当に不運な出来事に遭遇していた場合、何でもかんでも学びにすればいいというものではない気がします。
 
 ときには、逃げることがあってもいい。
 そう思ったりします。
 
 もちろん、日常的に直面することが多い問題、普通の人間関係とか、夫婦関係とか、そういうことに関する課題は、逃げても逃げられませんから、やはり本人の課題として、しっかり解決することが必要なのはいうまでもありません。
 
 この課題は、しっかり直面すべきものか、それとも、一旦楽になる方へ向かわせるか。こういうことをしっかり考える姿勢が大事なのではないかと思います。
 
 
 恋愛に悩む方には、あまり役に立たない内容だったかもしれません。
 独り言みたいなものですから、気にしないでください。


 

「ときには、課題から逃げることもあっていい。」への3件のフィードバック

  1. あづま先生、こんにちは。今回のコラムを読んで、とても深い感銘を受けました。
    「逃げることがあってもいい」。心の奥に響きました。
     
    私は母親から酷いDVを受けて育ちました。(理由は、母親の一方的な嫉妬でした)
    そのことを誰にも話せずに生きてきたせいか、人に対して怯えて接してしまうことも多く、子供の頃怖い思いをたくさんしたのに、さらに大人になってからもセクハラなどの被害を受けることがありました。
    そういったことと戦い、乗り越えるには、自衛すること、不適切な相手に対する接し方を学ぶこと、毅然とした態度をとること、あるいは周囲の人に助けを求めること以外、
    本当に、警察の力を借りるしかないんですよね。それでも相手が、加害者であることを認めない時もあって…
    今、ちょうどそういったことに直面をしていたので、心が折れてしまいそうになっていました。乗り越えられない自分や、被害に遭った自分を責めてしまってもいました。
     
    けれども、先生の書き込みを読ませていただいて、
    本当に心が軽くなる気持ちがしました。
    どうにもならない。でも、ここまでやったのだからもう逃げてもいいんだ。課題を乗り越えようとしないでいいんだ、そう思えたような気がします。
    被害に遭ってしまった自分をようやく許せるような、そんな気持ちです。
     
    これからは、課題を乗り越えようとするのではなく、自分に優しくしてあげる方向を目指そうと思います。
    このコラムを読ませていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。
    本当にありがとうございました。

  2. 命あってのものだねです。まず、自分が心身ともに問題を乗り越えられる程度に元気でなければ、余計傷が深くなります。
    逃げることも含めて、その問題から学んでいる過程だと思います。そういう結論を出すまでに、いろいろ試行錯誤し考え、精神的に成長しているはずだから。
    第一に、本人の心と身体の元気と相談すべきだと思います。
    桜子さん、これからはいじめの似合わない桜子さんになってください。今までに大変な目に遭われ、たくさん苦労したことと思います。だからこそ、そんな状況でベストを尽くした自分に誇りを持ってください。こんな難しい人生の課題は、普通の人には降ってきません。それを受け止め、乗り越えたのですから。自分に優しくして、自分を愛することができれば、絶対周りもそのような心につりあう人たちが寄ってくるはずです。そう確信して進んでください。

  3. 桜子さん
     
    コメントありがとうございます。
    このコラムが心に響いたようで、嬉しいです。
     
    SPさん
     
    とても温かいコメントありがとうございます。
     
     
    既にSPさんが書かれていますが、私も同意見です。
    そして、実は、少し広い視野でものを見てみると、桜子さんが決して課題から逃げていないことが分かります。
     
    大変な状況の中から抜け出すためには、とにかく自分の力で頑張るしかない時期があると思います。桜子さんはそれを立派になしとげて来たのだと思います。
    そして実は、次のステップでは、頑張ることをやめるのが、課題になるのです。少し言い換えると、「頑張らなければいけないという観念を手放す」ことが課題になるのです。
    これは、頑張らない自分になるという意味ではなく、必要に応じて「頑張る自分」と「力を抜く自分」を上手に使い分けられるようになる、ということです。
     
    既に課題を乗り越えるために頑張る方は、やってこられたわけですから、今度は、上手に力を抜いたり、自分に優しくしたりすることもできるようになるのが、新たな課題なのだと思います。
     
    ここまで頑張れたわけですから、きっとできますよ。
    ここからは、頑張るのではなく、楽しんで進んでいきましょう。

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