命をつなぐ

 

先日、NHKの番組で、ドクターヘリに乗っている医師の話を見ました。
ドラマよりもリアルで、しかも、現場の医師がドラマのように感情的ではなくて、冷静で落ち着きがあり、温かい感じがするのが印象的でした。
 
このドキュメンタリーの中で、医師が言っていたのが、
「命をつなぐ」という言葉。
 
命をつなぐ。これが大事なんだな。そう思いました。
 
 
ただ、その瞬間、私の脳裏に浮かんだのは、全く別のことでした。
それは、どんなに医療が進歩しても、人間の死亡率は100%。個人個人で考えれば、死は避けられないことです。今生きている人を助けるのは、もちろん大切なこと。でもそれだけでは、本当の意味で命をつなぐことにはならないのだろうな、ということが浮かんできました。
 
私たちは、個人個人が生きるというだけの意識から、命をつないで生きていくという意識に切り替える必要があるのだと思います。
 
 
驚異的な速度で少子化が進んでいる、今の日本。現在の状況は、継続可能な社会になっていません。
今生きている人のために何をするかは、ずいぶん発達しました。色々問題点が指摘されている部分もありますが、平均寿命も長いのですから、おおむねよくやっていると思います。
一方で、これから生まれてくる命のために何をするかについては、ずいぶん問題が置き去りになっているように思います。人は、目の前に存在しないものについては、ついつい考えることを忘れてしまうものですから。
 
でも、人間は、個人個人で見れば、有限の命しかありません。子孫を残し続け、命をつないでゆくことしか、命を保つ方法はないのです。そのような存在である以上、私たちはこれから生まれてくる命について、考えないわけには行きません。
 
 
このコラムは、子供を生まない女性について、否定的なことを主張しているものではありません。子どもを持つ、持たないは個人の選択でよいのだと思っています。その上で社会全体として、生みたい人がちゃんと生んで育てられる社会になっていることが大事なのだと思います。
 
結局、子供を産み、育てたい方を、もっとみんなで応援する必要があるのではないか、ということを問いかけています。今の日本のように、キャリアを心配し、夫婦仲を心配し、年老いてゆく親のことを心配し・・・と、様々な重荷を背負い続けていったら、とても安心して子育てができません。
 
私たちはついつい、目の前に見えるもの、既に存在するものに目を向けがちです。
でも、これから生まれてくる、まだ見ぬ命にも、少し目を向けてみる必要があると思います。
 
ドクターヘリなどは、見てすぐに分かる「非常事態」に対処するものですから、ドラマチックで、分かりやすい社会の改善です。
 
でも、今日本で進行しているのは、若い世代に豊かになれる仕事がなかったりと、いますぐ生死に関わる問題ではないけれど、真綿で首を絞められるような問題です。普通の人が普通に結婚して、普通に子育てができないという問題です。
 
全くドラマチックではないけれど、命をつなぐ、という意味では、普通の人を支援することが大切なのだと思います。
 
 
日本の少子化は「結婚率の低下」が最も大きな原因になっています。結婚も、個人の選択ですから、無理やり結婚させることがよいとは思いませんが、結婚したいけれどできない人の支援は、とても大切です。
私は、一人で社会を変えるほどの力はないですが、メンタルな理由で恋愛や結婚がうまく行かない人の問題解決を支援する形で、この問題に関わっていきたいと考えています。