正直、誠実な態度が、味方を作る

 

複雑な人間関係に悩んでいる人に多く見られる傾向として、
 
自分の考え、感情、価値観、そして問題意識を正直に、誠実に伝えることをしていない、というものがあります。
 
たとえば、職場の(ちょっと押しつけがましい)同僚に食事に誘われた。
でも、実は気乗りがしない。
「今回はね、おいしい中華のお店をみつけたのよ。一緒に行ってくれるわよね?」
ここで、「気乗りがしない」ことを伝えずに、
「そっか。うれしいな。でも、中華はちょっと苦手で・・・」
と、問題をすり替えて伝えます。
 
すると、その場は逃れられるかもしれませんが、きっと後日、
「○○さんは中華は苦手だったのよね。今回はイタリアンだからいらっしゃい。」
と、こうなるわけです。
 
 
たとえばまた、姑が苦手だと思っていたとします。
「今度遊びに行くわね。△△ちゃん(子供。姑にとっての孫)、大きくなったかしら?♪」
「ありがとうございます(本当は色々おもてなしするのがしんどくて嫌だ・・・)」
 
 
これは、正直な気持ちをきちんと伝えることができていないために起こることです。
上の、職場の人に対する対応でも、始めの段階で、
「仕事が終わったあとの時間は、勉強と、観劇などの感性を磨くことに使いたいんです。
 お誘いはありがたいんですけど、2カ月に1回ぐらいのおつきあいにさせてほしいんです。」
と、気乗りがしない本当の理由を、相手の気持ちに配慮しつつも、
率直に、誠実に伝えることができていれば、
 
「次回誘われたときにどんな言い訳をするか」
みたいな、めんどくさいことを考えずにすむわけです。
 
 
上の、嫁姑問題にしても、こんな風に伝えることはできるはずです。
「色々気にかけてくださるのは嬉しいんですけど、
 △△(子供)が、言えばなんでも買ってもらえると勘違いし始めていて、
 おもちゃをどんどん買い与える関わり方は、正直困っているんです。
 
 また、ものを色々頂くお気持ちはありがたいんですけど、
 ものが豊かな現代、子育て中の私たち夫婦に一番足りないものは、
 自分たちの時間と、あとは物を置く、家の広さです。
 
 わがまま言うようで申し訳ないのですが、ものを色々頂くよりも、
 実は、子供を預かってくれるとか、私たちの一番困っていることを
 サポートしていただける方が、実はよほど嬉しいんです。」
 
 
ある意味、「複雑な人間関係」は、自分のコミュニケーションパターンによって生み出されています。
複雑な人間関係ができてしまった原因の半分は自分にあると考えてみる必要があります。
 
 
もちろん、相手が良かれと思ってやっていることを、相手の気持ちにも配慮しつつ、正しく批判するのは、コミュニケーションスキルの中では高度な部類です。何も学ばず、何も努力せずにできるようにはならないと思います。よく考え、場合によっては良くリハーサルをして、きちんと伝えることが大事です。
 
そして、なぜ全部が自分の責任ではなくて、半分が責任だと書いたかというと、
 
このような人間関係ができてしまう理由のもう半分は、やはり相手側にあるからです。
正直に本当の気持ちを伝えても、それを無視されてしまったり、こちらの気持ちなどお構いなしに自分の都合を押しつけてくるような人が周りにいると、どうしても「嘘も方便」的な対応をせざるを得なくなります。
 
これは仕方のないことです。
 
但し、「嘘も方便」に慣れてしまうと、一番怖いのは、本当の味方が作れなくなってしまうことです。
味方になってくれる人には、やはり本音を伝える必要があります。本当の気持ち、困っていると言うこと。そうして初めて、相手が本当に味方になってくれる人かどうか分かるわけです。
 
残念ながら、すべての人があなたの味方になってくれるわけではありません。自分のことで(大抵は精神的に)いっぱいいっぱいで、他人のことを構っている余裕なんて全くない人や、人間的に未熟で、自分の都合を押しつけてくる人もいます。そんなときに「嘘も方便」的な対応をすることも、大人の生きる知恵だとは思います。
 
しかし、肝に銘じて絶対に忘れてはならないことは、
「嘘も(時には)方便」が、いつしか、
「嘘は(大抵の場合)方便」にならないようにすることです。
 
本来味方になってくれるはずの人まで、自分が本音を言わないことで失ってしまっては、本末転倒です。