【ココヘル731】恋愛ドクターの遺産第一話(6)変化1〜2

 

★女と男の「心のヘルス」ー癒しの心理学 731号 2016.12.9
 
こんにちは。あづまです。
いつも読んで下さってありがとうございます。
 
 
 
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 幸せな恋愛・結婚・人間関係のための
 心のデトックスマニュアル
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現在は、私の伝えたいセッションの理想を、
小説風にしてお伝えしようと、
作品を書いています。まあ、読みものとして
楽しんで頂ければと思います。
 
また、少しまとめて、解説を「ココヘル+」の方で書きたいと
考えていますので、物語だけではなく、心理学の学びがほしい、
という方は、そちらも合わせてご活用ください。
 
ココヘル+
https://www.556health.com/sp/e-zine/
 
 
 
 
前回までのあらすじ
 
離婚の危機で悩んで父親に相談したゆり子は、
伝説のカウンセラーで「恋愛ドクター」の異名を取る祖父(故人)の
ノート「恋愛ドクターの遺産(レガシー)」を父から渡された。
そのノートは小説になっていて・・・
中では、なつをとドクターの見解が割れていた。なつをは「愛情飢餓」
ドクターは結局「仕事ストレス」を原因と推定。気持ちを明るくする
行動課題を提案した前回。今回はいよいよセッションも佳境に。
 
【登場人物】
(現在の人物)
 ゆり子 父からノートをもらった。離婚するかどうか悩んでいる
 幸雄 ゆり子の夫。 仕事はできるが共感力のない人。
(ノートの中の人物)
 恋愛ドクターA ゆり子の祖父(故人) ノートを書いた本人
 なつを ドクターの助手
 こばやん 今回のクライアント 妻に離婚を突き付けられ相談に来た。
 
 
 
恋愛ドクターの遺産(レガシー)(6) 変化(1〜2※)
※メルマガではブログ配信の2記事分を一回で配信しています。
 番号を合わせるため、このようになっています。ご了承ください。
 
 
 
「最近いかがですか?」
先生が尋ねた。今日はこばやんがまた来ている。
 
「そうですね。相変わらず苦しいときはあります。」
「まだ、一番の問題が未解決ですからね?」
「そうですね。そのことを思うと、やっぱり気持ちが重くなります。」
「そうですよね・・・こういう状況の時は、どうしても心に負担がかかります。」
 
「はい・・・あ、でも、例のごほうび付きのウォーキング、最近はよく
やるようにしています。歩いているときは結構忘れていられるというか、
むしろ元気に歩けますね。」
(その言葉、さては気に入ったな)なつをは思った。
こばやんは今日は「ごほうび付きのウォーキング」という言葉をすらすらと
言った。おそらく前回のセッションで気に入って、自分の中でも、
この言葉を何度も使っていたのだろう。
 
「そうですか。それは何よりです。一番しんどかった時を0点、
何もかも良くなった時を100点としたら、今は大体何点ぐらいですか?」
 
「そうですね・・・40点ぐらいじゃないでしょうか。」
「なるほど。40点。それって何の40点分なんでしょうね。
何があるから、40点なのですか?」
 
出た!スケーリングクエスチョン。なつをは思った。
先生はこの質問を使うことが結構多い。今何点ですか、と状況を聞きながら、
同時にポジティブなことに目を向けさせるという、
カウンセリングの高等テクニックだ。
 
以前、なつをは初めてこの質問を教わったとき、ドクターに「その質問、
私もよく使います」と生意気な発言をして・・・例によってダメ出しを
もらったことがある。なつをが言及したのは、例えばフィギュアスケートの
演技を終えた選手に「今日の出来は何点ですか?」と訊くような、あの質問だった。
 
点数を数字で表すなんて、よくあること、と、知ったかぶりをしたのだった。
今でもそのときの、ドクターのがっかりした顔が忘れられない。
「その質問とは似ているが本質的なことが違う。たとえば90点と答えたら、
なぜ100点じゃないのか、減点したのは何なのかを訊くことが一般には多い。
減点法だ。でも、カウンセリングでは絶対にそれをしてはいけない。完璧主義で
自分を苦しめているクライアントも多いが、その質問をすればますますその傾向を
強めてしまう。そうじゃあなくて、『何があるから○点なんですか?』と、
あるものに意識を向ける、加点法の質問をすることが大事なんだ。」
 
 そう、加点法で「何があるから・・・」とあるものに意識を向けさせるような
質問をするのが、このスケーリングクエスチョンのコツなのだ。ドクターは質問の
達人だ。さりげないが、大事なポイントは絶対に間違えない。
 
 
「えぇと・・・最近は、美味しくご飯が食べられることが多くなりました。」
「それは何よりです。」
「それから、例のウォーキング。歩いているときは、
わりと清々しい気持ちになっている気がします。」
「そうですか・・・そんなところですか?」
 
「あと、意外と職場の人・・・あ、実は、離婚の危機かもしれない、ということを
同僚に話したのですが、男性の同僚はもちろん、女性も結構味方になってくれて、
親身に話を聞いてくれたりして、ここのあたりが固くギューっとなっていたのが
ほぐれたというか、温かくなったというか・・・」
 
こばやんは胸のあたりを手のひらで示した。そして続けた。
 
「とにかく、味方が結構多いと感じたことは大きかったですね。
人って優しいな、というか。」
 
「それはきっと、こばやんのお人柄ですね。今までの仕事や人付き合いで、
良い関係を築いていらっしゃったんですね。」
 
「あぁ・・・ありがたいことです。」
 
こばやんは、はっとした様子で顔を上げて、ドクターを見て言った。
「あ、なんか、65点ぐらいな気がしてきました。」
 
「ほう、65点! 結構いい線行ってますね!」
「そうですね。なんか、結婚の問題は、まだ解決していないですけど、
支えてくれる人もたくさんいるし・・・と思ったら元気が出てきました。」
 
何も基礎知識がない人がふたりの会話を見たら、何気ない会話、何気ない質問と
回答を繰り返しているように見えるかもしれない。でも、こんな短時間で、
明らかにこばやんは気持ちが明るく変わっている。やっぱり先生はスゴい、
なつをは思った。
 
「なつを君。椅子を用意してください。」
「え・・・あ、はい。」
突然こちらに話しかけられて咄嗟に返事が出なかった。なつをはいつもドクターの
セッションを観客みたいな気持ちで聞いてしまうのだ。
 
なつをが椅子をもうひとつ持ってくると、ドクターは立ち上がり、その椅子を
自ら持って、こばやんの横に、こばやんの方を向けて置いた。
「こばやん、こちらの椅子の方を向いていただけますか? 椅子ごとお願いします。」
 
こばやんが椅子の向きを変えると、ちょうど、こばやんが座っている椅子と、
新たな椅子とが向かい合った状態になった。なつをは知っていた。
これはエンプティーチェアという、カウンセリングの技法だ。
ドクターはこれからそれを実施するのだろう。
 
しかし、それから10分間ぐらいの先生の質問、そしてこばやんとのやりとりは、
なつをにはよく理解できなかった。先生は色々ホワイトボードに絵を描いて質問
したり、こばやんに何かを言わせたりしていたが、それが何を探るためのもので、
結局何を探し当てたのか、よく分からなかった。
 
しばらくして、空の椅子を手のひらで指し示しながらドクターが言った。
「ここに、そうですね。仕事のストレス・・・そうですね。会社がもしかして
立ちゆかなくなるかもしれない、というストレスが最大だった頃のあなたが
いるとイメージしてみてください。」
 
「はい。」
 
 なつをは、こばやんの表情がみるみるこわばってきたことに気づいた。
心理セラピーにおけるワークは、想像の世界で、ある意味、虚構の世界ではあるが、
それが本人にとっては、相当のリアリティーのあるものだったりする。この場合も、
すでに過去の出来事なのに、その当時のような緊張感がよみがえってきている。
 こばやんの表情がこわばるにつれて、その場の雰囲気もピリピリと張り詰めた
ようになってきた。そんな中でもドクターは特に表情を変えることなく、
相変わらず、穏やかな調子で指示を出していく。
 
(こういうところ、ホント先生はスゴイ・・・)
 
「こばやん、当時のあなたは、どんな服を着ていますか?」
「えと・・・スーツ姿です」
「髪型はどんなですか?」
「今と近いですけど・・・すこしボサボサな感じです。」
 
こばやんは髪のボリュームのあるタイプだ。髪が少しカールしているせいかも
しれない。なつをにも、そこにはいないはずの、少し髪がボサボサな、
当時のこばやんが見えたような気がした。
 
「どんな表情をしていますか?」
「かなり張り詰めた感じです。深刻そうな表情をしています。」
 
「では、当時のあなたになってみましょう。実際に椅子を移動して、
そちら側に座ってみてください。」
 
ドクターが手で、向かいの空椅子の方を示して、こばやんを促した。
こばやんが椅子に座る、絶妙なタイミングで、こう続けた。
 
「その椅子に座ると、当時のあなたになる、とイメージしてください。」
 
(意外とすんなり座るものだな・・・)
 なつをは、以前このワークを勉強のために実践したことがある。大抵、
向かいの空椅子には、自分にとって心地よくないものを座らせるため、
空椅子に移動するときには、ものすごく心理的抵抗がある。なつをは一度
「できません」と断ったことがある。その時も誘導役はドクターだったが、
「そっかー、できないよねー。何か抵抗あるみたいだねー。」「はい。」
「あ、でも、もう一回やってみたらできるかも。」「えっ!・・・」
こんな感じで押し切られて、「えいっ!」と座ったのだった。座ってみると
先ほどまでの抵抗感は急に消えていた。あれは本当に不思議な体験だった。
 でも、こばやんは、はた目には、特に抵抗もなく、すんなり座ったように
見えた。それがなつをには意外だった。
 
 こばやんは、相変わらず厳しい表情をしている。ドクターは質問を続ける。
 
「世界の明るさはどうですか?」
「全体的に、薄暗く、グレーな感じです。」
「空気の温度は、温かいですか?肌寒いですか?」
「ふつう・・・ですかね。」
「空気の重さは、軽いですか?重いですか?」
 
 これは先生必殺の質問法だ。空気の重さをきくと、その本人の持っている
罪悪感の重さが分かるのだ。そもそも、罪悪感は非常に重たく、感じることに
苦痛を伴う感情なので、人間は罪悪感を感じないように生きている。
 先生は「罪悪感は感じない感情です」とよく言っている。感じないからない、
のではなくて、感じないけど、潜在的にはそこにある感情、と禅問答みたいな
ことを言われたことがある。
 その、なかなか感じなくて、捕らえどころのない罪悪感を、質問一発であぶり
だすことができる、先生の発明が「空気の重さは?」なのだそうだ。
以前「どこの心理学の教科書にも書いてないけど」と自慢げに説明してくれた時の
先生の得意げな表情を、なつをは今でも鮮明に思い出せる。実は友達が自分を
責めて落ち込んでいるようなとき、なつをはこっそりこの質問を使っている。
 
「空気は・・・重いです。」
 
空気だけではない。こばやんの表情も、体も、全てから「重い」感じがにじみ出ている。
 
「ほんと・・・重そうですね。」
 
こういうとき、先生は、驚くほど軽い言い方をする。なつをには、その軽さが、
クライアントの深刻さとミスマッチなようで、いつも気になる。先生自身が重い
空気感に呑み込まれないために意識的にやっていることなのか、それとも、
これも何かの、セッションの効果を高めるための「発明」なのか・・・
一度聞いたことがあるが、そのときは適当にはぐらかされた。
 
「では一度、現在のあなたに戻ってきてください。」
 
ドクターは、先ほどまでこばやんが座っていた方の椅子
・・・現在は逆に空椅子になっている方・・・を手のひらで指し示した。
こばやんがゆっくりとそちらの椅子に戻る。
 
「当時の世界に入ってみて、どんな感じがしましたか?」
「えらいびっくりしました。ものすごい暗くて、重苦しゅうて・・・
当時の感覚が全部よみがえってきましたわ。」
 
(つづく)
 
 
こちらにもアップされています。
まとめ読みには便利かも・・・
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ご相談のご用命は、こちらから。
 
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 https://www.556health.com/work.html
 
 
◆編集後記
 
助手の「なつを」ですが、なぜこの名前なのか。
もし由来(ちょっと言葉遊びですが)が分かった方は、
ネタバレOKなので、こちらのブログにコメントしてくださいね。
 
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