ゆるしのワークの概念と手順

 

ゆるしのワークというのは、私がカウンセリングの基本である「傾聴」と共に、最も多用している、恋愛問題や人間関係の問題を解決するためのワークです。
 
典型的には、こんなケースの場合に最も効果が出ます。
 
A子さんは、ダメンズとばかり恋愛してしまう癖があり、悩んでいました。
そして、父親が母親に手を上げる人で、父親に対する憎しみの思いが恋愛に影響を与えているのではないかと考え、相談に来ました。
 
話を聴いていくと、
・彼に要求するのが申し訳ない
・色々求められて、お世話をしてあげるのが嬉しい
・つき合っていると、次第に苦しくなってくる
 
という、現在の悩みに関する訴えがあり、
一方で、
・父親が母親に手を上げる人で、それが許せない
 
ということを本人の意識としては、原因と考えているようでした。父親を許すことが出来ない、という訴えがありました。
 
最近では、親との関係が悪かったり、親を許していないことが、自分の人生に影響するという話(鏡の法則など)が広く知られるようになったため、
 
親を許せない私は、幸せになれないんだ。
親を許さなければいけないんだ。
でも、それが出来ない自分が嫌いだ。
 
みたいなところで、抜け出せずに苦しんでいる方が多く見られます。彼女(実際には一人ではなく、同様の方がたくさんいらっしゃいます)もそのような方の一人でした。
 
しかし、私は父親に対する怒りを整理しようとしても、きっと簡単には解決しないだろうと読んでいました。というのも、こういうケースでは、母親が(多くの場合無意識的に)、父親から攻撃される役割を選んでいて、被害者になり、「A子はこんなかわいそうなおかあさんの味方になっておくれ」という無言のメッセージを出しているものだからです。
 
父親に対する怒りは、本来、母親が持っていたものを受け継いでしまっただけです。
母親と自分(A子)との癒着、共依存関係を断ち切らない限り、この問題は解決しないと私は読んだわけです。
 
しかし、ここで母親を悪者にするワークをやろうとしても、うまくいきません。表面意識では「お母さんはかわいそうなのに頑張っていて、だから私はお母さんが好き」と思っていることも多いものなので(愛情と罪悪感の勘違いが起きる)。
 
 
また、A子さんは子供時代の記憶があまりなくて、具体的に何があったか、ということを話すのが難しい、とのことでした。傾聴を中心とする来談者中心療法では、子供時代の記憶を口に出して話すことで意識化し、意識できたことは、次第に風化していくというプロセスを信頼してセッションを進めますし、NLPのワークなどでも、具体的に過去の出来事を題材に、「ビデオ再現法」などのワークを行うのですが、
 
辛い子供時代を過ごした方の中には、子供時代の記憶を深く抑圧してしまったり、おそらくは、あまりに辛い状態(抑うつ状態)で過ごしたため、記憶能力が一時的に減退して、本当によく覚えていないという方もいらっしゃいます。そうすると、過去の出来事を取り上げてワークすることが非常に難しくなります。
 
 
そこで最近では、私は次のような方法をとることが多いです。
 
 
・子供時代の自分になったつもりで、椅子に座ってもらう
・その当時の家族の心の距離感を、椅子を置いて表現してもらう
 
やってもらうと、父親も母親も、心はそっぽを向いているように、彼女は表現してくれました。(このような悩みの場合、両親が寄り添っていて、子供の自分の方を見守ってくれているような、理想的な配置をする方は、実はほとんどいません。)
 
次に、
・大人の自分になって、家族の状況を俯瞰的(ふかんてき)に見てもらう
 
感想を聞くと、子供時代の自分がかわいそう、寂しそう、とのこと。
そこで次に、
 
・子供時代の自分(椅子)に、大人の自分が向き合う
・次の3つの言葉をかける
 「A子ちゃんは、悪くないんだよ」
 「よく頑張ったね」
 「A子ちゃんは、優しい子だね」
 
始め、なかなか素直に言えませんでした。
でも、しばらくずっと前に立っていると、言えるようになりました。
涙がいっぱいこぼれました。
 
最後に、
・「他に言ってあげたいことやしてあげたいことはありますか?」と訊く
すると、
「抱きしめてあげたい」
それをしてもらいました。
 
 
そして、もう一度、子供時代の椅子に座ってもらって、始めに座ったときと感じが変わっているかどうか聞いてみると、自分の心が温かい感じになっているとのことでした。
 
 
そして、ワークが終わったあとに、気づきについて色々話していると、
 
「私は自分のことを悪い人間だと思っていて、自分よりダメな男を見つけてきて、世話をしているときだけ、その罪悪感を感じないですむから、ダメンズを選んでいたんだと気づきました。」
 
と、話してくださいました。
 
 
恋愛・結婚生活がうまく行っている人を、交流分析の「基本的構え」で表すと、
自分もOK、相手もOK の姿勢なんですね。
 
彼女は長いこと、自分はnot OK、相手はOK(自己否定・自己犠牲)という構えで生きてきました。
すると不思議なことに、
自分はOK、相手はnot OK(他者否定・わがまま)の構えを持っている人と引き合ってしまうんですね。
 
 
・ダメンズを引き寄せてしまいがち
・なぜか、恋愛が縁遠くて、シングル期間が長い
・不倫癖がある
・交際していると次第にケンカが多くなる
そういった表面的な症状がある方の中には、このケースのような「自分をゆるしていない」という根っこの原因を持っている方が、かなりの割合でいらっしゃいます。
 
また、様々な人間関係の問題の原因を自己分析されて、
・父親を許していない
・母親を許していない
・子供時代に傷ついた経験があり、まだ怒りを抱えている
・別れた彼に、未だに腹が立つ
という「怒り」を抱えていることが(表面的には)原因だと思えるケースも、実はかなり多く(私の経験では8割以上)が、「自分をゆるしていない」ために他人も許せないという症状になっています。
 
そして、
・別れた彼が忘れられない
・彼に一極集中になって依存してしまう
という症状がある場合も、実は、自分自身のことを自分ですごく嫌って見下していて、「こんな私を好きになってくれる人なんてもう現れるわけがない」と感じていることは、かなり多いのです。
 
 
結局、自分を受け入れ、自分を好きになることが課題なのですが、「わたしはわたしを受け入れます」「自分のことを、うんと好きになります」などのアファメーションなど、ポジティブなアクションを起こしても、自分をゆるしていないと、実はイマイチ効果が出ません。
 
 
だからまず、自分をゆるすことから始めるのが大事なのです。
そのためにきわめて有効な、ゆるしのワーク。
これからも、活用していきます。
 
 
こうして、理論や手順だけ読んでも解決しないという方は、ぜひ恋愛セラピーをご利用下さい。
 
 
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