「子供のために離婚しない」のウソ

 

私のところに恋愛相談に見える女性の方のうち、3割ぐらいでしょうか、かなり多くの割合の方が「子供の頃から母親の愚痴聞き係でした」と訴えます。

この記事は、
(1)自分が子供の頃に、母親の愚痴を聞かされてきた方、
そして、
(2)いま夫との関係で悶々としていて、子供(よくあるのは娘)に愚痴を言いながら結婚生活を続けている方、
いずれの方にも読んでほしいと思って書いています。

それだけ嫌なのに離婚しないのはなぜか。よく聞く理由は、子供のため、というものです。

確かに、母子家庭の生活が悲惨だった時代もありますので、経済的理由で離婚をためらう気持ちも分かりますし、随分時代が変わった今でも確かにシングルマザーの生活は楽ではないですから、現実問題を考えて、地に足の付いた決断をする必要は確かにあります。

でも、あえて言います。「子供のため」というのはウソです。それは違います。

なぜ、「子供のために離婚しない」が問題なのか。
よく、カウンセラーの書いた記事には「子供の心に毒を流し込むことになるから」と書いてあったりしますが、私は、それは間違いではないけれど、少しズレていると考えています。

では、何が本当の問題なのか?

一番の問題は、子供に、この世界は思い通りにならない。嫌なことがあっても我慢しなければならない。問題があったとき、解決することはできない。そういう世界観を植え付けてしまうことだと、私は考えています。

もう一つの問題は、子供の心に負の感情という毒を流し込んでしまうことです。愚痴を聞かせることは子供の心に罪悪感を植え付けてしまいます。なぜなら子供は自分のせいでお母さんが不幸だという風に考えてしまうものだからです。

では、どうすれば良いのでしょうか。

まず、二番目の問題から行きたいと思います。基本的には子供を愚痴聞き係にはしない、ということが基本です。但し高校生ぐらいになったら(それまでにしっかり心が育っていれば)よい相談相手になると思います。愚痴こぼしでごめんね、と言いながら愚痴をこぼすなら、受け止めてくれるでしょう。小中学生の頃は、守ってあげることが必要だと考えて下さい。愚痴は、どこか別の所でこぼしましょう。

色々な本や、カウンセラーの書いた記事には、今書いた二番目の問題の方がメインに書かれているように思います。ですが、それは一番大きな問題ではないと、私は考えています。

先ほど一度書きましたが、一番の問題は、子供に無力感を受け継いでしまうことです。よく読んで下さい。私は無力感を「植え付ける」ではなく「受け継いでしまう」と書きました。

そうです。自分は問題を解決できない。一人になったら生きていけない。嫌だけれど従うしかない。親自身が持っている「自分は無力である」という自己概念、セルフイメージこそが、一番の問題なのです。

子供に何をしてあげるか、子供に何をしてはいけないかという「行動」の話の前に、親自身がどんな自己概念、セルフイメージを持っているかという「あり方」「存在」が前提となって、子供に染みこんでいきます。

子供に対して、どう関わるかの前に、自分自身のあり方を、「自分の運命は自分で切り開く」という姿勢に変えてゆくことが本当に大事なことなのです。

子供のために離婚しない、が本当に、本当に突き詰めたとき、たどり着いた結論で、腹も決まっている、覚悟ができている、そういう道ならば、子供に無力感を受け継いでしまうことはないでしょう。なぜなら、自分で選んだ道だからです。

さて、親が自分に愚痴を聞かせた、という経験を持っている方、お待たせしました。

あなたの心に受けたマイナスの影響は、先に書いたとおり、
・無力感(親が自分の問題を解決できないと思っていたことによる)
・罪悪感(親から愚痴を聞かされて、負の感情を与えられたことによる)
の、ふたつです。

原因が分かれば、解決の糸口は見つかります。
まずは、罪悪感の方から解決するのをお勧めします。親から受け取ってしまったマイナスの感情を吐き出して下さい。カウンセリングでも、ノートにどんどん書くのでも良いでしょう。そして、自分自身を許すと決めて下さい。

そして、無力感の方は、小さなことを達成して、それを自分で認める。その繰り返しで小さな自信を付けていくことの繰り返しです。一朝一夕には変わらないかも知れません。でも、自分で決めて、自分で行動して、自分で責任を持つ。この姿勢を続けていくことで本物の自信を付けていく。これが大事なことです。

そう、確かに原因は親にあるかもしれませんが、もう親は関係ないのです。自分自身のあり方は、自分自身で育てる。その考え方に切り替えられるかどうか、そこが大事なところです。

まとめですが、
今親であって、子供への影響を考えていらっしゃる方に対して再度お伝えしたいことは、子供のために離婚しない、という道は、それほど当然の道ではない、ということです。無力感と罪悪感という二つの負の遺産を残すことになるので、よくよく考えて選ぶべきだということです。
そして何より、自分自身が、自分の身に降りかかった問題を解決してしっかり前に進むという姿勢を持つことが子供への負の影響を最小限にする、いや、むしろプラスの影響を残すことすらできる道なのです。

一方、親からこのような影響を受けたと感じている方に向けて、再度お伝えしたいことは、巷でよく言われている「毒親」がどーたらとか、そういうことを気にするのではなく、一番は「自分の問題を自分で解決しない姿勢」を親から受け継いでしまったかも知れない、ということに気づくことだ、ということです。
そして勿論、自分の問題を自分で解決していく姿勢を、自分で育てることこそが、親から受けた負の影響を解消していく方法なのです。そこを意識するだけで、随分解決が容易になるはずです。親が離婚しているから子供の自分も解決不能な影響を受けてしまっている、と考える必要はありません。必ず解決できます。

以上、子供のために離婚しない、という短絡的な考えの代わりに、何をどう考えれば良いか、書いてみました。参考になれば幸いです。