フォーカシング:自分を痛めつけてきたことに気づく

 

※プライバシー保護のため、これまでの実例をベースにしながらも、
再構成してあります。雰囲気を感じ取ってください。
 
 
相談者:A子さん(27)
悩み:彼氏が出来ない
 
あづま(以下あ):こんにちは。よくいらっしゃいました。
A子(以下A):すみません、こんにちは。よろしくお願いいたします。
 
あ:どうぞおかけになって下さい。
A:はい。
 
あ:ではまず、このカウンセリングシートにお悩みを書いて下さい。
  申し込みの時と違っていてもいいですよ。
A:はいφ(..)カキカキ
 
あ:そうですか。ずっと恋人ができないんですね。
A:はい。
 
あ:何か、原因というか、気になっていることはありますか?
A:えぇと。この人いいな、って思うことはあるんですけど、
  すぐに、あ、でも、こんなところが嫌だ、みたいにして相手の
  欠点を探してしまうんです。
 
あ:そうですか。それでその人を好きになるのをあきらめる・・
A:はい。でも本当はつき合うのが怖いから言い訳を作っている
  ような気も・・・バカですよね。
 
あ:いえいえ。ご自分の気持ちにとても正直ですよ。
  大事なことです。
 
あ:・・・で、相手の欠点を探して、「こんな欠点のある人だから、
  つき合っても仕方がない」って考えてしまう。
  そんな感じなのですね?
 
A:はい。相手のあら探しをする自分が嫌になってしまって・・・
 
あ:そうですよね。
 
A:先生、こんな私でも、性格がよくなって、いい恋愛ができる
  ようになりますか?
 
あ:はい。 ・・・って安請け合いしちゃいけないんですけど(笑)
  でも、A子さんは性格も別に悪くないし、あることに気付けば
  恋愛だって普通にできると思いますよ。
 
A:私が性格が悪くないって・・・
  そんなことおっしゃっていただけるなんて・・・(ちょっと涙)
 
あ:本当に変われない人は、自分の性格が悪いとか言わない
  ものなんです。相手が悪い、ってずっと言い続けて。
 
A:あの・・・実は父がそういうタイプなんです。
あ:はい。
A:両親の関係が恋愛に影響するって言いますよね?
あ:そうですね。
A:父が、暴力は振るわないですけど、よく怒鳴って、人の意見
  を聞かない人で・・・母がなんだかかわいそうで。
 
あ:お父様やお母様のことで、どうしても気になっていて、ここ
  で話しておきたいことはありますか?
 
A:あの・・・小さい頃母に、「そんなに辛いなら別れたら」って
  言っちゃったんです。そうしたら、いつも気丈な母が、
  「あなたたちのために我慢して頑張ってるのに、別れたら
   なんて」って、わっと泣き出してしまったんです。
あ:そうでしたか。
  そのことで、今も「申し訳ない」と思っていますか?
A:はい。母には一度謝ったんです。
あ:あまり気にしていなかったでしょう?
A:はい。でもやっぱりなんか悪いような気がして・・・
 
あ:そうですか。A子さんはとても優しいんですね。
A:そんなふうに言っていただけることなんて、日頃本当にない
  ので(涙)・・・
 
あ:さて、それじゃ、セラピーに入りますけど。
  私は、「フォーカシング」という方法を基本にしています。
 
  フォーカシングっていうのは、体の感覚をたよりに、自分の
  本当の望みに気付いてゆくための方法です。
 
  緊張したときに、のどが苦しくなったり、
  不安なときに、胃のあたりが重苦しくなったり、
 
  嬉しいときは、わたしなんか、背中に羽根が生えたような
  気持ちいい、ふわふわしたような感覚になります。
 
  そういう、感情が体の感覚として現れるのを利用した方法
  です。
A:はい。
あ:感情が揺れることがあります。大丈夫ですね?
A:はい。
 
あ:ではまず、誰かを好きになって、それからその人の欠点を
  探してしまった。最近もありましたか?
A:はい。
あ:では、その方をここ(身振りで位置を示す)に思い浮かべて
  ください。
  どんな服を着ていますか?
A:スーツを着ています。グレーの。
あ:背は高いですか?太っている?やせている?
A:背は割と高くて、がっちりした体型です。太ってはいません。
あ:なるほど。髪型は?長い?短い?
A:短いです。
あ:表情はどんな感じですか?
A:笑っています。あぁ・・・
 
あ:どうしましたか?
A:こんなに素敵な方なのに、私って何で・・・
あ:(だまって待つ)
A:彼に悪いことをしちゃった・・・(涙)
あ:言いにくいことは言わなくても結構ですよ。
  でも、話した方が楽になることが多いですよ。
A:彼はとっても気が利くというか、気配り上手なんですよ。
  で、職場にかわいい女の子がいて、その子にも優しくしてい
  るのを見て、「八方美人」みたいに誰にでも媚びを売っている
  と嫌われるよ、って言っちゃったんです。
  あんなこと言わなきゃよかった・・・・(涙)
あ:そうでしたか、言ったあなたも辛かったですね。
A:(涙)・・・
 
(中略)
フォーカシングに進めないので、そのままイメージの中の彼に
「ごめんなさい」と言ってもらいました。
そして・・・
 
あ:では、いよいよフォーカシングに入りますけど、
  その本当は素敵な彼を、「八方美人」と考えてしまっている
  A子さんは、どんな気持ちですか?
A:なんかとても惨めな気持ちです。
  本当は素敵な相手なのに、わざわざ欠点を探して、だめな
  相手だと思おうとしている自分が、惨めです。
あ:そうですね。
  惨めと感じるんですね。
A:はい。
あ:その、惨めと感じる気持ちは、体のどの辺で一番感じますか?
A:頭から、胸のあたりまでです。
 
あ:どんな感じですか?
A:なんか、押さえ付けられるような、縮むような感じです。
あ:やな感じですか?
A:はい。動けないような感じで。
 
あ:素敵な彼を目の前にイメージして、その縮むような感覚を、
  ぐ?っと感じてみてください。
 
A:あぁ(涙ぐむ)
あ:その調子です。もっとぐ?っと感じてみてください。
A:(涙)・・・
 
あ:その感覚に色があるとしたら、どんな色ですか?
(中略・解説)
その感覚に色や形をつけて「実際にものがある」感じをつかんで
いきます。心ですから、このようにして見えるようにします。
 
 
あ:今度は、その感覚をこうして、体の外に出して見ます。
  どんなふうに見えますか?
 
(中略・解説)
どんなふうに見えるか、感じるかを聞いていきます。
 
 
 
あ:では、心だけ抜け出して、その「縮むような感覚」の中に入っ
  て行くとイメージしてください。できましたか?
A:はい。
あ:いまあなたは、その「縮むような、惨めな感覚」になりました。
  目の前には、今度はA子さんがいるとイメージできますか?
A:はい。
 
(解説)
自分を客観的に見るために、自分の感情と、自分(の自我)との
一人二役をやってもらっています。
 
あ:では、「縮むような、惨めな感覚さん」にお訊ねします。
  あなたは、どうしてA子さんの中にいてくれているんですか?
  何か、A子さんに伝えたいことがあるんじゃありませんか?
 
A(体の感覚になりきっている、以下「A(体)」):
  A子さんが、他人を悪く捉えて、でもそれはA子さんのために
  ならないことだと思うんです。
 
あ:ではあなたは、A子さんに他人を悪く捉えても自分のために
  ならないよ、って伝えたくてそこにいてくれているんですね?
 
A(体):はい。それと、本当は相手に親切にされているけれど、
  A子さんはそれを拒絶するんです。なんでそんなことするの!
  っていつも思います。
 
あ:あなたは、A子さんに、どうなってもらいたいですか?
 
A(体):無理して自分を低くしないで、力を抜いて親切とか、
  拒絶しないで受けたらいいと思う。
 
あ:そうですか。それなら、良い言葉がありますよ。
  A子さんに言ってあげましょう。私に続いて・・・
  「A子さん、あなたは親切を受けるに値する人間です」
 
A(体):A子さん、あなたは親切を受けるに値する人間です。
 
あ:「あなたは、愛情を受けるに値する人間です」
 
A(体):あなたは愛情を受けるに値する人間・・・(涙)・・です。
 
あ:そうです。
 
あ:今度は、その体の感覚から抜け出して、もとの体に戻った
  とイメージしてください。さっきの体の感覚はここ(場所を示す)
  にあります。
A:はい。
 
あ:A子さん、その「体の感覚」さんはね、A子さんに、親切に
  されたときに、受け取ればいいのにって言ってくれてましたよ。
 
A:はい。
 
あ:さっきは、嫌な感じだと思っていたんですよね?
  今はどうですか?
 
A:あの・・・大切なものだと思いました。
 
あ:そうですね。大事なメッセージを送ってくれていたんですね。
  でも、A子さんは今まで無視しようとしてきませんでしたか?
 
A:はい。
 
あ:では、その「惨めな気持ちの体の感覚さん」に、
  「今まで大事なことを教えてくれてありがとう」と言いましょう。
A:今まで大事なことを教えてくれてありがとう(涙)
あ:次に、「これまで無視してきてごめんね」
A:これまで無視してきてごめ・・・(号泣)・・・・・・・・・・
 
あ:辛かったね。ずっと我慢してきたんだね。
A:うわ?ん(涙)
 
・・・
 
あ:その体の感覚さんは、今はどう見えますか?
A:なんか、いい感じです。
あ:そうですよね。大切な感情ですものね。
 
あ:では、胸の中にもう一度しまって、一緒に帰りますよね?
A:はい。
 
あ:その、体の感覚は「縮むような、惨めな感じ」でした。
  いまは、いい感じに変わっています。
  今まで一緒に生きてきました。
 
  A子さん、ではその感覚を胸の中にこうして(入れる仕草)
  入れてください。
 
A:あったかい感じがします。
あ:しばらく、その感覚を味わいながら、その体の感覚と
  一緒にいて下さい。十分だと思ったら合図してください。
 
(少し間をおいて)
 
A:はい。
あ:はい。では、最後に挨拶をしましょう。
  その、体の感覚はA子さんの大切な一部です。
  今まで一緒に生きてきました。
  私の後に続いてこう言って下さい。
  「今日までありがとう。これからも一緒に成長していこうね」
 
A:今日までありがとう。これからも一緒に成長していこうね。
 
あ:なんか、スッキリした晴れやかな笑顔ですね。
A:(涙を拭きながら)はい。すごく気持ちが楽になりました。
  私、随分自分をいじめていたんですね。
 
あ:それに気付けば、一番大きな山を乗りこえたのと同じです。
  あとは、少しずつ変わっていけますよ。
 
(中略)
このあと、宿題(行動課題といいます)を出したり、次回の予約
について相談したりしました。
笑顔で帰っていきました。
 
 
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※事例は個別のケースです。効果が出るようセラピストとして最大限努力していますが、
 効果には個人差がありますことをご理解下さい。