解決志向とは?たとえ話

 

 心の問題を解決するというのは、どういうことか。
 多くの人が、役に立たない方向に向かって努力し、苦しんでいるのを見て、何か分かりやすいたとえ話がないかと思い、この話を思いつきました。
 
 あなたは、道ばたに落ちていた石ころにつまずいて転び、足の骨を折ってしまいました。折れた部分が痛みます。とにかく、治療をしなければなりません。
 あなたは、原因を探り始めました。そして、石ころが悪いことに気づきました。そうです。あの石ころさえなければ怪我をしなくてすんだのです。石ころを何とかしなくては!
 ところが、痛む体を押して現場に行ってみると、既にその憎い石ころはありませんでした。誰かが片付けたのでしょうか。あなたは、その日以来、石ころを見るたびに踏みつけて投げ飛ばさなければ気が済まなくなってしまいました。その石ころは、あなたを転ばせたものとは違うのに・・・その石ころを踏みつけたらあなた自身が痛いのに・・・その石ころを投げ飛ばしたらかえって危ないのに・・・
 
 何か間違っていませんか?
 そうです。
 
 治療するためには、石ころ(きっかけ)に目を向けるのではなく、現在の痛みの原因になっている骨折(これが現在の直接原因)を治す必要があります。
 そして骨折の場合、痛みなく正しく歩けるように、「あるべき形に骨を接いで固定する」ことをしますね。しばらくすると骨はその形に固まり、再び体を支えることができるようになります。
 
 
 治すものが骨折だと、誰でも冷静に考えられるのですが、
 治すものが心の傷になると、見えないだけに、方向を見失ってしまいがちです。
 
 
 同じ話を、心の傷バージョンでするとどうなるでしょうか?
 
 あなたは、暴言を吐き、家族の面倒をろくに見ない父親に育てられ、心が傷ついて育ちました。自己否定の気持ち、不安、焦燥感を感じ、心が痛みます。とにかく、治療をしなければなりません。
 あなたは、原因を探り始めました。そして、父親が悪いことに気づきました。そうです。あの男さえいなければ傷つかずにすんだのです。アイツを何とかしなくては!
 ところが、既にアイツは離婚してどこかに行ってしまい、既に行き先が分かりません。分かったとしても会う意味がないような気がします。あなたは、その日以来、アイツに似た男を見るたびににらみつけなければ気が済まなくなってしまいました。あるいは、惚れさせて振り回し、こっぴどく振りたいという気持ちが湧いてくるかもしれません。もしかすると、あなた自身がどうしようもなくアイツに似た男に惹かれることがあるかもしれません。ソイツは、あなたを傷つけたアイツとは違うのに・・・ソイツをにらみつけてもアイツには届かないのに・・・ソイツを傷つけたらあなた自身の心も痛いのに・・・ソイツに惚れることは、あなたの心の傷をまた呼び起こすことになるのに・・・
 
 何か間違っていませんか?
 そうです。
 
 治療するためには、その男やその男の行動(きっかけ)に目を向けるのではなく、現在の痛みの原因になっている心の傷そのもの(これが現在の直接原因)を治す必要があります。
 そして心の問題の解決の場合、痛みなく幸せに生きられるように、「あるべき心の習慣をつける」ことをするのです。しばらくすると心は不要な感情や悪い習慣を手放し、幸せに生きられる習慣を身につけ、自分自身の幸せを支えることができるようになります。
 
 
 この話の要素をまとめると、以下のようになります。
 
 きっかけ   親の暴力、無視、いじめ、恋人との別れetc → 道ばたに落ちていた石ころ
 痛みの原因 癒されていない感情や、特定の行動に対する怖れ → 折れた骨
 痛み     不安やイライラ、焦燥感など               → 傷の痛み
 治療     幸せに生きられる心の持ち方を習慣にする      → あるべき形にギブスで固定
 
 
 なお、心の痛みのケースでは、きっかけが「親の暴力」であっても、本人の心の中で「私が悪い」という観念が強い場合、「私の中の悪いところ探し」をして堂々巡りに陥ってしまうこともあります。この場合このコラムでの「きっかけ」に相当するものは「私自身」となります。もちろんこの場合でも「自分を肯定して幸せなことに目を向ける心の習慣」をつけることが治療になるのは共通しています。
 
 また、心の痛みのケアでは、骨折のように「元の状態に戻す」だけではなく、「心の成長を促す」考え方が必要です。今まで幸せをイメージすることが怖くてできなかった場合でも、幸せな気持ちが気持ちいいことを心が学び、次第にそれに対する怖れを手放してゆくことで成長してゆくことができます。心は何歳からでも成長できます。
 骨折と同じように、心の使い方の悪い癖がついてしまったら「リハビリ」が必要です。すぐに他人の言葉の裏を読んで、ネガティブな気持ちになってしまう深読みの癖や、ちょっと冷たくされると捨てられてしまうのではないかという怖れがわき上がってくる孤独感の癖、自分の思い通りにならないと、相手を無理矢理でも自分の思うとおりに行動させたいと渇望する支配の癖、あるいは、自分の理想(というか幻想)からちょっとでもずれると、とたんに相手に見切りをつけてしまう完璧主義の癖。これらの心の習慣はあなたが子供の頃か、あるいは思春期の頃には、その場を生き抜いてゆくために必要だったものだのでしょう。でも、今のあなたは、もう大人で立派に生きています。不要になったルールを手放して、心の習慣を変えていくことで、生きるのがずっと楽になります。
 
 
※このたとえ話は、治療の具体的な方法を示したものではありません。考え方です。
 ですが、この基本的な考え方はとても大事なもので、私のセラピーの全ての根本をなしています。
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